静かなる爆弾

評価:
吉田 修一
中央公論新社
¥ 1,365
(2008-02)

昔から変な修行を編み出してはよくやっていた。
今から考えれば何をやっていたのだろうと首をかしげるものばかり。
たとえば、中1の時の6月18日の記憶をどこまで覚えていられるか。 
この日は何か起こったわけではなく、何も起こらなかったからこそ、自分の記憶力を試そうとしょっちゅう思いだしていた。
そして、もし、いま、目が見えなくなったら、という修行も。
駅から家までどんなルートを取ればいいのか、家の中で暮らすには、どうすればいいか。
そんなことをよく妄想してシュミレーションしていた。
そんな時、私は音によく注目していた。
目をつぶっていても音で判断すれば大丈夫。そう思って、周囲の音というものにはよく注目していた。

先日のはらいそで行った「えなの響き」のワークショップの際に「あなたにとって怖いこととは何か」という話になった。
ごきぶり、天変地異、・・・。いろんな人がいろんなものを怖いと言ったが、私は「耳が聞こえなくなること」が怖いと真っ先に思ったのだった。
聞こえている人が、完璧に音のない部屋に入れられると数時間で気が狂ってしまう、という話を聴いたことがある。
そんなことも頭にあったのかもしれない。
音のしている世界は私にはとても大切だ。

「静かな爆弾」は図書館で何気なく借りた本。

テレビの世界で働いている男と無音の世界を生きている女が出会うお話。
彼自身の仕事もめまぐるしく変化していく中で、男は聾唖者である女の生きている世界を少しずつ知っていく、知ろうと努力し始める。

音の聞こえている者と聞こえていない者の世界は同じところにいるのに、全く違うものを感じてしまう。
この小説はそんなずれを丁寧に、聞こえる側からの視点で内省して行く。
見ているものも違うし住む世界も違うと互いに思いながらもそれでも惹かれあう男女。
読みやすくておもしろくて1日で読んでしまった。



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